一度だけ翅を広げ、また閉じて、何時間も動かない。
最期のときを迎えようとしているらしい。

同じ日、鱗粉が落ちて色褪せたウラギンスジヒョウモンもやってきた。同じところを繰り返し低く飛んでいて、弱っているのがわかる。
お別れを言いに来てくれたのか、しばらく私の周りをまとわりつくように飛んでいたが、ちょうどカメラがバッテリー切れを起こしてしまい、これは写真を撮れなかった。
今朝見ると、葉っぱの上に昨日のアゲハの姿はなかった。
シュタイナーの『天使たち 妖精たち』の中に、蝶が死ぬときについての記述がある。
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蝶々が死ぬとき、蝶々の羽の粉は消えてなくなるように見えます。
蝶々の羽からこぼれ落ちるのは、最高に霊化された実質なのです。
蝶々の羽から飛び散る粉は、小さな彗星のように、地球の熱エーテルのなかに流れていきます
季節の経過のなかで、蝶々たちが死滅する時期になると、すべては内的にきらきらと輝きます。
この輝きのなかに、サラマンダーが入っていき、その輝きを受けとります。
そして、サラマンダーが蝶々の羽から運んだものが、宇宙空間に光を放ちます。
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小さな蝶も、これほどに宇宙的な存在なのだ。
自然界の生きものたちは、何とみごとに逝くのだろう。