「この本をかくして」
(マーガレット・ワイルド文/フレヤ・ブラックウッド絵)
以前紹介した「図書館にいたユニコーン」という物語と少し似ている。
戦争で図書館に爆弾が落ちて・・・

図書館の本はみんな木端微塵になり、ピーターのお父さんが借りていた一冊だけが残った。
敵軍がやってきてみんなに町から出て行くよう命令したとき、お父さんは鉄の箱に本を入れた。
「ぼくらにつながる、むかしの人たちの話が、ここにかいてある。
おばあさんのおばあさんのこと、おじいさんのおじいさんのまえのことまでわかるんだ。
ぼくらがどこからきたか、それは金や銀より、もちろん宝石よりもだいじだ。」
人々は町から追い出され、みんなの家には火が放たれた。みんなは何週間も歩き続けた。ある夜、お父さんはピーターに宝物を託し、夜が明けるころに息が止まった。
みんなはお墓を掘り、ピーターには鉄の箱を持って行くのをあきらめるように言った。まだ長い旅が続くのだ。
ピーターは山を越える手前の村で、大きな木の下に宝物を埋めた。ここに爆弾が落とされることはないだろう。
ピーターは山を越えて、港から船に乗って海も超えた。
新しい国で、ピーターは青年になった。
戦争が終わって、ピーターは再び海を越え、あの村まで行き、大きな木の下にいた女の子に話しかけた。
「ここに宝物がうまってるはずだよ」
女の子は地面を掘るのを手伝った。そうして鉄の箱の中から本が取り出された。
「ぼくらにつながるむかしの人たちのことが、ここにかいてある。
ぼくらがどこからきたか、それは金や銀よりもだいじ」
ふるさとの町の図書館は新しく建て替わっていた。
ピーターは本を図書館に持っていった.....
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連綿と続く人々の暮らしの中で、大切なものが継承され、文化を作る。
それまでの暮らしを奪った戦争は、少年が青年になるほどの時間続いた。
今も爆弾が落ちてくる国があり、落ちてこないまでも、大人も子供もスマホばかりいじっているうちに「目に見えない大切なもの」が破壊され続けている国もある。
本は、考えたり想像したり、共感し魂を揺さぶられたりする人間らしい力を呼び起こす。そうした人間らしいいとなみが文化であり、破壊者たちにとっては都合の悪いものなのだ。
爆弾とは別の方法で、人間らしい力は今も巧妙に奪い取られている。
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戦争がほんとうに破壊するものは何か、ということについて、ここでリンクを貼っている「森へ行こう」というブログに書かれているので、その記事を紹介しておきます。
https://plaza.rakuten.co.jp/moriheikou/diary/202208160000/
posted by Sachiko at 22:11
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