グリム童話の「森の中の三人の小人」。
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奥さんをなくした男と、ご亭主をなくした女がいました。
それぞれには、娘がひとりいました。
ある時女やもめが男の娘に、このおばさんがお父さんのお嫁さんになりたがっていると伝えるように言いました。
そうして二人はいっしょになりましたが、男の娘は美しく、女の娘は器量が悪かったので、女はしだいにまま娘につらくあたるようになりました。
ある冬の日、女はまま娘に、紙で作った服を着て森でいちごをとってくるように、かごがいっぱいになるまでは帰ってきてはいけないと言いつけ、娘はかたいパンを一つだけ持たされて森へ出かけました。
森に入ると小さな家があり、そこに三人の小人が住んでいました。
娘があいさつをして戸をたたくと、おはいり、という声がしました。
小人たちがパンをわけてほしいと言ったので、娘は小さなパンを半分わけて、ここに来たいきさつを話しました。
小人は娘にほうきを渡し、これで戸口の外の雪をはくようにいいました。
三人の小人は親切な娘におくりものをすることにしました。
ひとりは、娘が日ましに美しくなるように、もうひとりは、娘が口をきくたびに口から金貨が落ちるように、三人目は、どこかの王さまが娘をお妃にするように、と。
娘がほうきで雪をはくと、そこに真っ赤に熟したいちごが出てきました.....
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このあと、いちごを摘んで家に帰った娘が口をきくたびに金貨がこぼれ落ちる。
うらやましくなった実の娘が自分も森に行きたいとせがむので、女は娘に毛皮のコートを着せ、バター付きパンとお菓子を持たせる。
森で、この娘は挨拶もせず小人たちの家に入り、持って来たお菓子もひとりで食べて分けてやらず、ほうきで雪を掃く気もない。
小人たちは、この子が日ましに醜くなるように、口をきくたびにヒキガエルが飛び出すように、不幸な死に方をするようにと、それぞれ贈り物をした。
気だてがよく美しい娘が継母から無理難題を言い渡されるが、超自然的な存在に助けられる。そしてもう一人の娘は真逆の行ないをして真逆の目にあうのは、おとぎ話の典型パターンのひとつだ。
ここまでは「ホレおばさん」と似た筋書きで、冬の森でマツユキソウを採って来るように言いつけられた、マルシャークの「森は生きている」も、同じパターンだ。
類話はヨーロッパのかなり広範囲にわたって伝えられていると思われる。
この話の場合はさらに続きがあり、贈り物の三つめが叶えられて、娘はお妃になり、子どもを産む。
それを聞いた継母とその娘は王様の留守中にお城に入り、お妃をベッドから引きずり出して窓から外の川に放り込み、娘が身代わりにベッドにもぐりこんで...という話が続く。
メルヒェンはとてもシンプルだ。
よい行いにはよい報いがあり、悪い行いには悪い報いがあって、最後には悪事は暴かれ、相応の結果となる。
宇宙から降ろしてきたシンプルな法則は、子どもだけでなくすべての年代の人間に働きかける。
それは、時代によって複雑になったり歪んだりする地上の様相とは別の高みから、魂にまっすぐ射しこむ星の光のようだ。
※グリム童話の全作品を読めるサイトが幾つかあり、これはその一つ
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https://www.grimmstories.com/ja/grimm_dowa/list----------------------------
《森の中の三人の小人》
https://fairyhillart.net/grimm1.html
posted by Sachiko at 17:39
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メルヒェン