2024年09月14日

ほんものの田園

「リビイが見た木の妖精」(ルーシー・M・ボストン)より。

土手に行かなかったことについてリビイは、「あたし、あの川、こわいの」と言った。

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・・・あなたが指図できないものは、みんなこわいのかしら?
気をつけないと、おとなになったとき、「なんとか委員」になるわ。
・・・
わたしは、委員会なんてものできめられないことがあるって、いいことだと思うの。
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ジューリアさんはこうして、指図したがる人が持つ隠れた恐怖をさらりと言ってのける。自由な想像力と自然を愛するジューリアさんの意志は強い。

昔、ルーシー・M・ボストンの自伝(「意地っぱりのおばかさん」というタイトルだったと思う)を読んだことがある。
ジューリアさんは若きルーシーであり、『グリーン・ノウ物語』のオールドノウ夫人は円熟したルーシーだ。そのどちらも魅力的だ。

ジューリアとリビイはいっしょに土手に行き、小道の地割れが大きくなっているのを見た。

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「木の下の、ここが、ニンフたちがいるとおっしゃった淵じゃないの?」

ジューリアの、おどろくほど、きらきらした目は、いつもなにか深い興味をひくものをみつけますが、それが人間であったことはなさそうです。
でも、ジューリアは、どんなことでも、よろこんで話してくれます。

「あれがその淵だとは言わなかったわ。でも、そうであってもかまわない、と言ったのよ。」
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夜、外には霧が立ちこめ、あやしげなかたちに動きだす。
リビイは安心して眠れるように、木のもようのカーテンをきっちりと引いた。

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ほんものの田園は、なれない人にとっては、おそろしいほど、あらあらしいものです。
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朝早く目を覚ますと、外ではまだ残っている霧がさまざまなかたちに揺れていた。“くものす”は、霧の影に吠えている。
風が霧を吹きのけると、そこにはしなやかなニンフたちが、“くものす”に誘いかけていた。
やがて太陽が、霧が見せた不思議なものたちを振りはらってしまった。


シュタイナーは、子どもが育つのに最も適した環境は田園だ、と言っていた。
自然が自由に生き生きとしていて、魂も自由に拡がっていく場所、不思議なものたちとも仲間になって、手を取りあってダンスができるような場所。それはほんものの田園にちがいない。
 
posted by Sachiko at 22:00 | Comment(2) | ルーシー・M・ボストン