2024年11月19日

新しい木

「リビイが見た木の妖精」(ルーシー・M・ボストン)より。

リビイがジューリアに呼ばれて目を覚ますと、ほかには誰もいなかった。
ジューリアの弟のチャールズが帰って来たという。

「きょうは家へかえる日だっていうこと忘れてた?
まあ、おかしな子。ヘヤーブラシの上に寝ていたの?」

ジューリアはブラシに長い深緑の毛が1本ついているのに気がついたけれど何も言わなかった。


朝ごはんのテーブルで、リビイはチャールズと向き合って座っていた。

「ねえさんが、あなたは幸運な子だっていってるよ。」

リビイはぎくりとしたが、用心深く、庭の木について尋ねた。

「もしこの世にドリュアースがいるとしたら、ここの木は木の精のすみかになりますか?」

チャールズが見せてくれたのは、シナノキの若木だった。
あとでチャールズが“くものす”との散歩から戻ると、木の幹に緑の髪がひとふさ留めてあり、張り紙には「予約済」と書かれていた。

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リビイはドリュアースに会い、ジューリアさんもチャールズも、ドリュアースが存在することを知っている。ここは、ごく自然にドリュアースが棲む田園だ。
その自然さは、キツネや野ネズミや小鳥たちがいる世界と地続きに、あたりまえにドリュアースも棲んでいるかのようだ。

最後に、さらさら川にお別れを言いに行くと、倒れた木が横たわっている以外は、水が引いていつもの夏の姿に戻っていた。

そうしてまた長い車の旅が終わり、リビイはロンドンの家に帰った。
あんなにたくさんの素晴らしい冒険をしたのに、お母さんにうまく話すことができない。

「あのね、“くものす”っていう犬がいたの」

やっとこれだけを言って、あとは心の中にしまっておくことにした。


田園で過ごした一週間ほどの時間に、自然の美しさ不思議さと子ども時代の輝きがいっぱいに詰まっている。
心の中に大切にしまったそれは、生涯輝きを失わないだろう。

このお話を書いた時、ルーシー・M・ボストンは79歳。リビイがうまく話せなかった冒険は、みずみずしい物語となった。
作品の原題は「NOTHING SAID」である。
 
posted by Sachiko at 21:47 | Comment(2) | ルーシー・M・ボストン
2024年11月07日

冬の始まり2024

今年の札幌の初雪は10月20日の早朝だったそうで、市内全域で降ったのかどこか一部だけだったのかわからない。少なくとも私は見ていない。
久しぶりの10月の初雪だったそうだ。

今日の雪は、気温が高めなのでみぞれになったりあられだったり、午前中は雷が鳴っていたりだったが、あたりは白くなった。
明日にはほとんど融けてしまうだろうけど、チューリップの球根を植え終わっていてよかった。

snow24.jpg

数日前までは、まだ最後の蜂が最後の花の蜜を吸っていた。
今日はもう冬眠に入っただろうか。

bumblebeewinter.jpg

雪が降ると一気に気分は冬モードになり、クリスマスツリーを出さなければ、などと思う。
温暖化と言いながら、こうしてまだ雪が降ってくれる。

季節の巡りは、何度繰り返されても飽きることなく、毎回新しい。
一面真っ白な雪に覆われる冬.....この静かで美しい冬がなければ、地球は決定的な美をひとつ欠いてしまう。
  
posted by Sachiko at 22:38 | Comment(2) | 季節・行事