とても久しぶりのムーミン谷、「たのしいムーミン一家」から。
魔法使いらしい“飛行おに”は、『ルビーの王さま』というすばらしい宝石を探して世界中どころか宇宙までも旅していた。
そのとき月にいた飛行おには、地球で赤い光が輝いているのを見つけ、黒ヒョウに乗ってムーミン谷に降りて来る。
トフスランとビフスランという、双子のようにそっくりなひとたちが持っていたスーツケースの中に、ルビーはあった。飛行おにはこれを300年も探していたのだ。
何か食べるものがほしいという飛行おにに、ムーミンママはパンケーキとジャムを差し出す。
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パンケーキにジャムをのせて食べるひとが、そんなに危険人物であるわけがありません。(これは『ムーミン谷の名言集』にも載っている)
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85年ぶりにパンケーキを食べたという飛行おにに、みんなは同情する。
パンケーキを食べ終えた飛行おには言った。
「わしはきみたちのルビーを、とりあげるわけにゃいかない。そんなことをするのは、どろぼうだからな。
しかし、なにかととりかえるわけにはいかんかね。」
けれどトフスランとビフスランはどうしても渡したくないと言う。
しばらく悲しそうにすわっていた飛行おには、最後にこう言った。
「わしはきみたちのために、ちょっとしたまほうをつかって、じぶんをなぐさめることにしよう。
きみたちのひとりひとりに、一つずつまほうをかけてあげよう。
さあ、みなさん、なにかのぞみがあったらいいなさい。」
300年も探し続けた宝が目の前にありながら手に入らない埋め合わせに、魔法でみんなの願いを叶えてあげる.....とても奇妙な申し出に見える。
でも飛行おには、それで慰められるらしいのだ。
ムーミンママは、スナフキンが旅立ってしまったことを悲しんでいるムーミンがもう悲しまないようにと願った。
飛行おにがマントを一振りすると、ムーミンの悲しむ心は、また会える日を待ち望む心に変わり、そのほうがずっと気持ちがいいのだった。
そして元気になったムーミンは、どこか遠くにいるスナフキンのところまで、ごちそうの載ったテーブルを届けてくれるように願う。
ムーミンママが与えられた願いの力を、自分のためにではなく悲しむムーミンのために使うこのシーンが、私はとても印象に残っている。
ママはきっと何かを求める必要がないほど満ち足りているのだ。
そして気分がよくなったムーミンも、願いの力をスナフキンのために使う。さっきまではそのスナフキンがいないことで悲しんでいたのに。
こうして他の誰かのための願いが循環していくようすは心地よく映る。
飛行おにの魔法の話はもう少し続く....
2025年04月09日
“飛行おに”の魔法
posted by Sachiko at 22:33
| Comment(2)
| ムーミン谷
ほんとうの愛って
こういうことなのですね
私は 自分の欲が先行して
自分の願いを言ってしまいそう
修行が足りない(笑)
他のひとを満たすことができるのだな、と思います。
遠慮せず我慢せず、自分の願いが満たされたら自然に器が溢れて、
ほかの人に分かちあうのが嬉しくなるのかも...(^-^)