2025年10月29日

ブルカニロ博士・2

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「おまえのともだちがどこかへ行ったのだろう。あのひとはね、ほんとうにこんや遠くへ行ったのだ。おまえはもうカムパネルラをさがしてもむだだ。」

「ああ、どうしてなんですか。ぼくはカムパネルラといっしょにまっすぐ行こうと言ったんです。」

「ああ、そうだ。みんながそう考える。けれどもいっしょに行けない。そしてみんながカムパネルラだ。おまえが会うどんなひとでも、みんななんべんもおまえといっしょにりんごをたべたり汽車に乗ったりしたのだ。
だからやっぱりおまえはさっき考えたように、あらゆるひとのいちばんの幸福をさがし、みんなといっしょに早くそこに行くがいい。そこでばかりおまえはほんとうにカムパネルラといつまでもいっしょに行けるのだ。」
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みんなのほんとうの幸福はなんだろう、とジョバンニは思い、それをさがしにどこまでもいっしょに行こうと言ったカムパネルラはいなくなってしまった。
そこに現れた不思議な大人が語る言葉は、この世の時空も生も死も超えたところのことを話しているようだ。

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「ああ、ぼくはきっとそうします。ぼくはどうしてそれをもとめたらいいでしょう。」

「ああわたくしもそれをもとめている。おまえはおまえの切符をしっかり持っておいで。
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汽車の中で車掌が切符を確かめに来たとき、ジョバンニがあわててポケットを探ると緑色の紙が入っていた。
何だかわからないままそれを車掌に渡すと、車掌はそれを承認したようでそのままジョバンニに返してくれた。鳥捕りがそれを見て言った。

「こいつはもう、ほんとうの天上へさえ行ける切符だ。天上どこじゃない、どこでも勝手にあるける通行券です。こいつをお持ちになれぁ、なるほど、こんな不完全な幻想第四次の銀河鉄道なんか、どこまででも行けるはずでさあ」

天上すらも超越したような不思議な切符。
どうやら「みんなのほんとうの幸福」を求める旅に必要な、大事な切符らしい。
鳥捕りとの話の中でも、ジョバンニはほんとうの幸福のことを考える。

・・・もうこの人のほんとうの幸いになるなら、自分があの光る天の川の河原に立って百年つづけて立って鳥をとってやってもいいという気がして、どうしてももう黙っていられなくなりました。
ほんとうにあなたのほしいものはいったいなんですか、と訊こうとして、それではあんまりだしぬけだから、どうしようかと考えて振り返ってみましたら、そこにはもうあの鳥捕りがいませんでした・・・

あなたのほんとうの幸いは何か、ほんとうにほしいものはいったい何か、と訊かれたら、多くの人は何と答えるだろうか。
“ほんとう”の奥の奥の願いに、なかなかたどり着けないかもしれない。

「おまえはおまえの切符をしっかり持っておいで。そして一しんに勉強しなけぁいけない。」
そしてこの後に、化学や地理や歴史の話が続いていく.....
 
posted by Sachiko at 22:01 | Comment(0) | 宮澤賢治
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