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「おまえはおまえの切符をしっかり持っておいで。そして一しんに勉強しなけぁいけない。おまえは化学をならったろう。水は酸素と水素からできているということを知っている。いまはたれだってそれを疑やしない。実験してみるとほんとうにそうなんだから。
けれども昔はそれを水銀と塩でできていると言ったり、水銀と硫黄でできていると言ったりいろいろ議論したのだ。
みんながめいめいじぶんの神さまがほんとうの神さまだというだろう。けれどもお互いほかの神さまを信ずる人たちのしたことでも涙がこぼれるだろう。
それからぼくたちの心がいいとかわるいとか議論するだろう。そして勝負がつかないだろう。」
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何も存在しないと言われている真空の宇宙空間は、古い時代には精妙なエーテルというものに満たされていると信じられていた。
このエーテル空間説は、今また一部でひそかに見直されているらしい。
どの神さまがほんとうだとか異教だとか、心がいいとかわるいとか、こういう議論も今なお終わらない。
お互いほかの神さまを信ずる人たちのしたことでも涙がこぼれる...歴史の中でここに至るには、幾つもの時代を超える必要があっただろうか。
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「けれども、もしおまえがほんとうに勉強して実験でちゃんとほんとうの考えと、うその考えを分けてしまえば、その実験の方法さえきまれば、もう信仰も化学とおなじようになる。」
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その実験の方法とは何だろう。実験というと何だか無機的に聞こえるけれど、信仰も化学も同じようになる領域に立つのは、宇宙空間から地球全体を見るような感覚だろうか。
そこから見れば昼と夜、夏と冬は分かれていない、海と陸は分かれていない。
そして生と死も分かれていないのなら、銀河鉄道の旅は、この世界を超えた「ほんとうの幸福」を探して静かなエーテル空間を行く旅のようだ。
2025年11月16日
ブルカニロ博士・3
posted by Sachiko at 22:43
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| 宮澤賢治
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