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「さあ、切符をしっかり持っておいで。おまえはもう夢の鉄道の中でなしにほんとの世界の火やはげしい波の中を大股にまっすぐに歩いて行かなければいけない。天の川のなかでたった一つの、ほんとうのその切符を決しておまえはなくしてはいけない。」
あのセロのような声がしたと思うとジョバンニは、あの天の川がもうまるで遠く遠くなって風が吹き自分はまっすぐに草の丘に立っているのを見、また遠くからあのブルカニロ博士の足おとのしずかに近づいてくるのをききました。
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『ジョバンニの切符』という章の中に、ジョバンニがいつの間にか持っていた緑色の切符のことが出てくる。
それを見た鳥捕りがこう言った。
「・・・こいつはもう、ほんとうの天上へさえ行ける切符だ。天上どこじゃない、どこでも勝手にあるける通行券です。こいつをお持ちになれぁ、なるほど、こんな不完全な幻想第四次の銀河鉄道なんか、どこまででも行けるはずでさぁ」
この緑色の切符はジョバンニだけが持っていたようだが、自分ではどこで手に入れたのだったかわからない不思議な切符だ。
そしてこれは、けっしてなくしてはいけない、ただひとつのほんとうの切符らしい。ブルカニロ博士という名前はここで初めて出てくる。
切符についてのアレゴリー的な解釈は不要だろうと思う。
ほんとうの幸福を探す旅に必要な、大切な切符なのだ。
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「ありがとう。私はたいへんいい実験をした。私はこんなしずかな場所で遠くから私の考えを他人に伝える実験をしたいとさっき考えていた。おまえの言った語はみんな私の手帳にとってある。さあ帰っておやすみ。
おまえは夢の中で決心したとおりまっすぐに進んでいくがいい。そしてこれからなんでもいつでも私のとこへ相談においでなさい。」
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博士は夢と言っているけれど、文字通りの夢とは思えない。博士のテレパシー実験のようなことらしいが、それ自体何がどうなっているのかどうもよくわからない。
この“夢”の中では、ジョバンニはいつでも相談に行けるように博士の居所も知っているのだろうか。
カムパネルラや、汽車の中で会ったさまざまな人たちも、テレパシー実験の入れ子のようになっているのか...
全体がやはり、夢と言い切れない深く壮大な魂の旅に見える。
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余談:この記事で、記事数999(スリーナイン)になった♪
2025年12月29日
ブルカニロ博士・7
posted by Sachiko at 22:52
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| 宮澤賢治
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