今年も今日から12聖夜。
ネタ切れと、ブルカニロ博士の話がまだ終わっていないので、今年は毎日更新はしないけれど、とても重要な期間であることに違いはない。
毎年言っている気がするけれど、2025〜2026の12聖夜は特に大事だ。それほど今の時代は、人間の意識の在り方が重要だということだ。
このまますべてが破壊されてしまう方向に突き進むのか、全く新しい世界にシフトするのか。
そこであらためて、12聖夜のおさらいをもう一度。
12月25日から1月6日のエピファニーまでの12夜は次の年の12か月に対応している。
25日=1月、26日=2月・・・1月5日=12月、というように。
そしてこの期間に行ったこと、考えたこと、思ったことが次の年に反映されるという。
聖夜を過ぎて、魂はいっそう深い領域に降りる。
毎年エピファニーが過ぎると、別次元の旅を終えて現実に戻ったような、不思議な気分になるのだ。
2025年12月25日
12聖夜・2025〜2026
posted by Sachiko at 23:00
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| クリスマス
2025年12月18日
ブルカニロ博士・6
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「さあいいか。だからお前の実験は、このきれぎれの考えのはじめから終わりすべてにわたるようでなければいけない。それがむずかしいことなのだ。けれども、もちろんそのときだけのでもいいのだ。
ああごらん、あすこにプレシオスが見える。おまえはあのプレシオスの鎖を解かなければならない。」
-----------------------------
プレシオスの鎖とは何かについてはどうやら昔から各方面で論議の的らしいのだけど、結局はっきりしたことはわからない。
プレシオスはプレアデスのことで、旧約聖書のヨブ記に出てくるプレアデスの鎖のことだという説もある。
あなたはプレアデスの鎖を結ぶことができるか
オリオンの綱を解くことができるか(ヨブ記38-31)
プレアデスの鎖は解くのではなく「結ぶことができるか」と問われている。ヨブ記のこの箇所もさまざまな解釈があるが、本筋から外れるのでここではこれ以上追わない。
-----------------------------
そのときまっくらな地平線の向こうから青じろいのろしが、まるでひるまのようにうちあげられ、汽車の中はすっかりあかるくなりました。そしてのろしは高くそらにかかって光りつづけました。
-----------------------------
ここであらためて、ジョバンニがまだ銀河鉄道に乗ったままだったことに気づく。カムパネルラと入れかわりに現れた不思議な人物が語る話がずっと続いていたのだ。
-----------------------------
「ああマジェランの星雲だ。さあもうきっとぼくはぼくのために、ぼくのおっかさんのために、カムパネルラのために、みんなのために、ほんとうのほんとうの幸福をさがすぞ。」
ジョバンニはくちびるをかんで、そのマジェランの星雲をのぞんで立ちました。そのいちばん幸福なそのひとのために!
-----------------------------
みんなのほんとうの幸福とは何か、答はすでに問いの中にあるという。
“いちばん幸福なそのひとのために”
いちばん幸福な姿のジョバンニ自身、お母さん、カムパネルラ....
いつもいちばん幸福でいるその人を思うことの中に、すべての人の幸福を探そうというその意志と心情の中に、幸福の姿をしたものがきっと見出せるだろう。
「さあいいか。だからお前の実験は、このきれぎれの考えのはじめから終わりすべてにわたるようでなければいけない。それがむずかしいことなのだ。けれども、もちろんそのときだけのでもいいのだ。
ああごらん、あすこにプレシオスが見える。おまえはあのプレシオスの鎖を解かなければならない。」
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プレシオスの鎖とは何かについてはどうやら昔から各方面で論議の的らしいのだけど、結局はっきりしたことはわからない。
プレシオスはプレアデスのことで、旧約聖書のヨブ記に出てくるプレアデスの鎖のことだという説もある。
あなたはプレアデスの鎖を結ぶことができるか
オリオンの綱を解くことができるか(ヨブ記38-31)
プレアデスの鎖は解くのではなく「結ぶことができるか」と問われている。ヨブ記のこの箇所もさまざまな解釈があるが、本筋から外れるのでここではこれ以上追わない。
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そのときまっくらな地平線の向こうから青じろいのろしが、まるでひるまのようにうちあげられ、汽車の中はすっかりあかるくなりました。そしてのろしは高くそらにかかって光りつづけました。
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ここであらためて、ジョバンニがまだ銀河鉄道に乗ったままだったことに気づく。カムパネルラと入れかわりに現れた不思議な人物が語る話がずっと続いていたのだ。
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「ああマジェランの星雲だ。さあもうきっとぼくはぼくのために、ぼくのおっかさんのために、カムパネルラのために、みんなのために、ほんとうのほんとうの幸福をさがすぞ。」
ジョバンニはくちびるをかんで、そのマジェランの星雲をのぞんで立ちました。そのいちばん幸福なそのひとのために!
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みんなのほんとうの幸福とは何か、答はすでに問いの中にあるという。
“いちばん幸福なそのひとのために”
いちばん幸福な姿のジョバンニ自身、お母さん、カムパネルラ....
いつもいちばん幸福でいるその人を思うことの中に、すべての人の幸福を探そうというその意志と心情の中に、幸福の姿をしたものがきっと見出せるだろう。
posted by Sachiko at 14:00
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| 宮澤賢治
2025年12月06日
ブルカニロ博士・5
-----------------------------
そのひとは指を一本あげてしずかにそれをおろしました。
するといきなりジョバンニは自分というものが、自分の考えというものが、汽車やその学者や天の川や、みんないっしょにぽかっと光って、しいんとなくなって、ぽかっとともってまたなくなって、そしてその一つがぽかっとともると、あらゆる広い世界ががらんとひらけ、あらゆる歴史がそなわり、すっと消えると、もうがらんとした、ただもうそれっきりになってしまうのを見ました。だんだんそれが早くなって、まもなくすっかりもとのとおりになりました。
-----------------------------
この箇所は、「春と修羅 序」を思い起こさせる。
この詩をまた別の言葉で表しているかのようだ。
わたくしといふ現象は
假定された有機交流電燈の
ひとつのい照明です
(あらゆる透明な幽靈の複合體)
風景やみんなといっしょに
せはしくせはしく明滅しながら
いかにもたしかにともりつづける
因果交流電燈の
ひとつのい照明です
(ひかりはたもち その電燈は失はれ)
それらも畢竟こゝろのひとつの風物です
(すべてがわたくしの中のみんなであるやうに
みんなのおのおののなかのすべてですから)
自分という存在が、他の全てといっしょに光っては消え、また光っては消え、それらすべてを包む大いなる時空もまたそのように光っては消え....
何度読んでもこれはもう、何か感想を述べようとすることもいらない、ただただそうあるとおりにあって、---すっと消えると、もうがらんとした、ただもうそれっきり---を感じるしかない。
そのひとは指を一本あげてしずかにそれをおろしました。
するといきなりジョバンニは自分というものが、自分の考えというものが、汽車やその学者や天の川や、みんないっしょにぽかっと光って、しいんとなくなって、ぽかっとともってまたなくなって、そしてその一つがぽかっとともると、あらゆる広い世界ががらんとひらけ、あらゆる歴史がそなわり、すっと消えると、もうがらんとした、ただもうそれっきりになってしまうのを見ました。だんだんそれが早くなって、まもなくすっかりもとのとおりになりました。
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この箇所は、「春と修羅 序」を思い起こさせる。
この詩をまた別の言葉で表しているかのようだ。
わたくしといふ現象は
假定された有機交流電燈の
ひとつのい照明です
(あらゆる透明な幽靈の複合體)
風景やみんなといっしょに
せはしくせはしく明滅しながら
いかにもたしかにともりつづける
因果交流電燈の
ひとつのい照明です
(ひかりはたもち その電燈は失はれ)
それらも畢竟こゝろのひとつの風物です
(すべてがわたくしの中のみんなであるやうに
みんなのおのおののなかのすべてですから)
自分という存在が、他の全てといっしょに光っては消え、また光っては消え、それらすべてを包む大いなる時空もまたそのように光っては消え....
何度読んでもこれはもう、何か感想を述べようとすることもいらない、ただただそうあるとおりにあって、---すっと消えると、もうがらんとした、ただもうそれっきり---を感じるしかない。
posted by Sachiko at 16:06
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| 宮澤賢治
2025年11月22日
ブルカニロ博士・4
-----------------------------
いいかい、これは地理と歴史の辞典だよ。この本のこのページはね、紀元前二千二百年の地理と歴史が書いてある。よくごらん、紀元前二千二百年のことでないよ。紀元前二千二百年のころにみんなが考えていた地理と歴史というものが書いてある。
だからこの本のページ一つが一冊の地理の本にあたるんだ。いいかい。そしてこの中に書いてあることは紀元前二千二百年ころにはたいていほんとうだ。さがすと証拠もぞくぞくと出ている。けれどもそれが少しどうかなとこう考えだしてごらん、そら、それは次のページだよ。
-----------------------------
ここに書かれていることを、紀元2025年と置き換えてみよう。
2025年のことではなく、2025年にみんなが考えていること、だ。
それらは2025年ころには大抵ほんとうらしく、最新の科学で証明された!という証拠を示すこともできるだろう。
こうして現在正しいと言われていることも遠からず別の考えに取って代わられ、歴史を俯瞰して見ると、悠久の変化の中の今なのだと知る。
-----------------------------
紀元一千年。だいぶ、地理も歴史も変わってるだろう。このときにはこうなのだと変な顔をしてはいけない。ぼくたちはぼくたちのからだだって考えだって、天の川だって汽車だって歴史だって、ただそう感じているのなんだから、そらごらん、ぼくといっしょにすこしこころもちをしずかにしてごらん。いいか。」
-----------------------------
その大きな本にはきっと、遠い過去だけでなく、遥か未来のことまでも書かれているような気がする。宇宙全体の時空を見渡す目によって。
いいかい、これは地理と歴史の辞典だよ。この本のこのページはね、紀元前二千二百年の地理と歴史が書いてある。よくごらん、紀元前二千二百年のことでないよ。紀元前二千二百年のころにみんなが考えていた地理と歴史というものが書いてある。
だからこの本のページ一つが一冊の地理の本にあたるんだ。いいかい。そしてこの中に書いてあることは紀元前二千二百年ころにはたいていほんとうだ。さがすと証拠もぞくぞくと出ている。けれどもそれが少しどうかなとこう考えだしてごらん、そら、それは次のページだよ。
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ここに書かれていることを、紀元2025年と置き換えてみよう。
2025年のことではなく、2025年にみんなが考えていること、だ。
それらは2025年ころには大抵ほんとうらしく、最新の科学で証明された!という証拠を示すこともできるだろう。
こうして現在正しいと言われていることも遠からず別の考えに取って代わられ、歴史を俯瞰して見ると、悠久の変化の中の今なのだと知る。
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紀元一千年。だいぶ、地理も歴史も変わってるだろう。このときにはこうなのだと変な顔をしてはいけない。ぼくたちはぼくたちのからだだって考えだって、天の川だって汽車だって歴史だって、ただそう感じているのなんだから、そらごらん、ぼくといっしょにすこしこころもちをしずかにしてごらん。いいか。」
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その大きな本にはきっと、遠い過去だけでなく、遥か未来のことまでも書かれているような気がする。宇宙全体の時空を見渡す目によって。
posted by Sachiko at 21:41
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| 宮澤賢治
2025年11月16日
ブルカニロ博士・3
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「おまえはおまえの切符をしっかり持っておいで。そして一しんに勉強しなけぁいけない。おまえは化学をならったろう。水は酸素と水素からできているということを知っている。いまはたれだってそれを疑やしない。実験してみるとほんとうにそうなんだから。
けれども昔はそれを水銀と塩でできていると言ったり、水銀と硫黄でできていると言ったりいろいろ議論したのだ。
みんながめいめいじぶんの神さまがほんとうの神さまだというだろう。けれどもお互いほかの神さまを信ずる人たちのしたことでも涙がこぼれるだろう。
それからぼくたちの心がいいとかわるいとか議論するだろう。そして勝負がつかないだろう。」
-----------------------------
何も存在しないと言われている真空の宇宙空間は、古い時代には精妙なエーテルというものに満たされていると信じられていた。
このエーテル空間説は、今また一部でひそかに見直されているらしい。
どの神さまがほんとうだとか異教だとか、心がいいとかわるいとか、こういう議論も今なお終わらない。
お互いほかの神さまを信ずる人たちのしたことでも涙がこぼれる...歴史の中でここに至るには、幾つもの時代を超える必要があっただろうか。
-----------------------------
「けれども、もしおまえがほんとうに勉強して実験でちゃんとほんとうの考えと、うその考えを分けてしまえば、その実験の方法さえきまれば、もう信仰も化学とおなじようになる。」
-----------------------------
その実験の方法とは何だろう。実験というと何だか無機的に聞こえるけれど、信仰も化学も同じようになる領域に立つのは、宇宙空間から地球全体を見るような感覚だろうか。
そこから見れば昼と夜、夏と冬は分かれていない、海と陸は分かれていない。
そして生と死も分かれていないのなら、銀河鉄道の旅は、この世界を超えた「ほんとうの幸福」を探して静かなエーテル空間を行く旅のようだ。
「おまえはおまえの切符をしっかり持っておいで。そして一しんに勉強しなけぁいけない。おまえは化学をならったろう。水は酸素と水素からできているということを知っている。いまはたれだってそれを疑やしない。実験してみるとほんとうにそうなんだから。
けれども昔はそれを水銀と塩でできていると言ったり、水銀と硫黄でできていると言ったりいろいろ議論したのだ。
みんながめいめいじぶんの神さまがほんとうの神さまだというだろう。けれどもお互いほかの神さまを信ずる人たちのしたことでも涙がこぼれるだろう。
それからぼくたちの心がいいとかわるいとか議論するだろう。そして勝負がつかないだろう。」
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何も存在しないと言われている真空の宇宙空間は、古い時代には精妙なエーテルというものに満たされていると信じられていた。
このエーテル空間説は、今また一部でひそかに見直されているらしい。
どの神さまがほんとうだとか異教だとか、心がいいとかわるいとか、こういう議論も今なお終わらない。
お互いほかの神さまを信ずる人たちのしたことでも涙がこぼれる...歴史の中でここに至るには、幾つもの時代を超える必要があっただろうか。
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「けれども、もしおまえがほんとうに勉強して実験でちゃんとほんとうの考えと、うその考えを分けてしまえば、その実験の方法さえきまれば、もう信仰も化学とおなじようになる。」
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その実験の方法とは何だろう。実験というと何だか無機的に聞こえるけれど、信仰も化学も同じようになる領域に立つのは、宇宙空間から地球全体を見るような感覚だろうか。
そこから見れば昼と夜、夏と冬は分かれていない、海と陸は分かれていない。
そして生と死も分かれていないのなら、銀河鉄道の旅は、この世界を超えた「ほんとうの幸福」を探して静かなエーテル空間を行く旅のようだ。
posted by Sachiko at 22:43
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| 宮澤賢治
2025年10月29日
ブルカニロ博士・2
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「おまえのともだちがどこかへ行ったのだろう。あのひとはね、ほんとうにこんや遠くへ行ったのだ。おまえはもうカムパネルラをさがしてもむだだ。」
「ああ、どうしてなんですか。ぼくはカムパネルラといっしょにまっすぐ行こうと言ったんです。」
「ああ、そうだ。みんながそう考える。けれどもいっしょに行けない。そしてみんながカムパネルラだ。おまえが会うどんなひとでも、みんななんべんもおまえといっしょにりんごをたべたり汽車に乗ったりしたのだ。
だからやっぱりおまえはさっき考えたように、あらゆるひとのいちばんの幸福をさがし、みんなといっしょに早くそこに行くがいい。そこでばかりおまえはほんとうにカムパネルラといつまでもいっしょに行けるのだ。」
-------------------------------
みんなのほんとうの幸福はなんだろう、とジョバンニは思い、それをさがしにどこまでもいっしょに行こうと言ったカムパネルラはいなくなってしまった。
そこに現れた不思議な大人が語る言葉は、この世の時空も生も死も超えたところのことを話しているようだ。
-------------------------------
「ああ、ぼくはきっとそうします。ぼくはどうしてそれをもとめたらいいでしょう。」
「ああわたくしもそれをもとめている。おまえはおまえの切符をしっかり持っておいで。
-------------------------------
汽車の中で車掌が切符を確かめに来たとき、ジョバンニがあわててポケットを探ると緑色の紙が入っていた。
何だかわからないままそれを車掌に渡すと、車掌はそれを承認したようでそのままジョバンニに返してくれた。鳥捕りがそれを見て言った。
「こいつはもう、ほんとうの天上へさえ行ける切符だ。天上どこじゃない、どこでも勝手にあるける通行券です。こいつをお持ちになれぁ、なるほど、こんな不完全な幻想第四次の銀河鉄道なんか、どこまででも行けるはずでさあ」
天上すらも超越したような不思議な切符。
どうやら「みんなのほんとうの幸福」を求める旅に必要な、大事な切符らしい。
鳥捕りとの話の中でも、ジョバンニはほんとうの幸福のことを考える。
・・・もうこの人のほんとうの幸いになるなら、自分があの光る天の川の河原に立って百年つづけて立って鳥をとってやってもいいという気がして、どうしてももう黙っていられなくなりました。
ほんとうにあなたのほしいものはいったいなんですか、と訊こうとして、それではあんまりだしぬけだから、どうしようかと考えて振り返ってみましたら、そこにはもうあの鳥捕りがいませんでした・・・
あなたのほんとうの幸いは何か、ほんとうにほしいものはいったい何か、と訊かれたら、多くの人は何と答えるだろうか。
“ほんとう”の奥の奥の願いに、なかなかたどり着けないかもしれない。
「おまえはおまえの切符をしっかり持っておいで。そして一しんに勉強しなけぁいけない。」
そしてこの後に、化学や地理や歴史の話が続いていく.....
「おまえのともだちがどこかへ行ったのだろう。あのひとはね、ほんとうにこんや遠くへ行ったのだ。おまえはもうカムパネルラをさがしてもむだだ。」
「ああ、どうしてなんですか。ぼくはカムパネルラといっしょにまっすぐ行こうと言ったんです。」
「ああ、そうだ。みんながそう考える。けれどもいっしょに行けない。そしてみんながカムパネルラだ。おまえが会うどんなひとでも、みんななんべんもおまえといっしょにりんごをたべたり汽車に乗ったりしたのだ。
だからやっぱりおまえはさっき考えたように、あらゆるひとのいちばんの幸福をさがし、みんなといっしょに早くそこに行くがいい。そこでばかりおまえはほんとうにカムパネルラといつまでもいっしょに行けるのだ。」
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みんなのほんとうの幸福はなんだろう、とジョバンニは思い、それをさがしにどこまでもいっしょに行こうと言ったカムパネルラはいなくなってしまった。
そこに現れた不思議な大人が語る言葉は、この世の時空も生も死も超えたところのことを話しているようだ。
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「ああ、ぼくはきっとそうします。ぼくはどうしてそれをもとめたらいいでしょう。」
「ああわたくしもそれをもとめている。おまえはおまえの切符をしっかり持っておいで。
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汽車の中で車掌が切符を確かめに来たとき、ジョバンニがあわててポケットを探ると緑色の紙が入っていた。
何だかわからないままそれを車掌に渡すと、車掌はそれを承認したようでそのままジョバンニに返してくれた。鳥捕りがそれを見て言った。
「こいつはもう、ほんとうの天上へさえ行ける切符だ。天上どこじゃない、どこでも勝手にあるける通行券です。こいつをお持ちになれぁ、なるほど、こんな不完全な幻想第四次の銀河鉄道なんか、どこまででも行けるはずでさあ」
天上すらも超越したような不思議な切符。
どうやら「みんなのほんとうの幸福」を求める旅に必要な、大事な切符らしい。
鳥捕りとの話の中でも、ジョバンニはほんとうの幸福のことを考える。
・・・もうこの人のほんとうの幸いになるなら、自分があの光る天の川の河原に立って百年つづけて立って鳥をとってやってもいいという気がして、どうしてももう黙っていられなくなりました。
ほんとうにあなたのほしいものはいったいなんですか、と訊こうとして、それではあんまりだしぬけだから、どうしようかと考えて振り返ってみましたら、そこにはもうあの鳥捕りがいませんでした・・・
あなたのほんとうの幸いは何か、ほんとうにほしいものはいったい何か、と訊かれたら、多くの人は何と答えるだろうか。
“ほんとう”の奥の奥の願いに、なかなかたどり着けないかもしれない。
「おまえはおまえの切符をしっかり持っておいで。そして一しんに勉強しなけぁいけない。」
そしてこの後に、化学や地理や歴史の話が続いていく.....
posted by Sachiko at 22:01
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| 宮澤賢治